上越タイムス連載#10 「移行措置1年目を振り返って」

■1992年に公立小学校で英語の授業が実験的に始められてから17年、実施そのものへの賛否両論を含めて様々な取り組みが行われてきました。民間では、例えば1975年に当地に開設したLL英語教室を皮切りに、幼児・児童対象の英語教育は巷にあふれ、親は玉石混淆の教室選びに四苦八苦の在り様です。

 

■教育に官民の区別などありません。あるとすれば、民間教育は市場原理で淘汰されますので教材と現場での指導改訂が頻繁ですが、公教育では百花繚乱の指導法が渦巻いても、文科省の鶴の一声で一つに定まってしまうのが現実です。2009,2010の移行措置期間でさえ、文科省は、「英語ノート」を全国の小学校に押しつけがましく配付しました。新井小学校は、勇断を持って、35年に渡って生き抜いてきた私のLL英語教室のノウハウを信頼し私を助言者とされました。2011年度からは、民間の私の出番はなく、他教科と横並びの上意下達の歯車の一つになることでしょう。

 

■配付された「指導要領」と「英語ノート」の中で、私の考え方と相いれない部分を2点紹介致します。

 

■先ず、5,6年生に必修として外国語活動の時間を週1回配当していますが、思考力・判断力が備わってきて理屈で物事を考える力が付いてきていると、英語の歌を歌うこと、短い会話を覚えてアクティビティを楽しむそのこと自体を目的としては、なにかすっきりしない気分が残ることを感じました。中学のように週3~4回の授業で理解を深める学習時間が与えられていないと、「聞いた通りのことを言う」英語体験では、やはり「分からないまま言う」ことへの不安が溜まります。

 

■次に、指導要領の、「文字指導は、(中略)中学校学習指導要領により中学校段階で扱うものとされており、小学校段階では取り扱うこととはしていない。」にも無理があります。5,6年生ともなると、例えば1年目の学習成果発表として演じた「桃太郎」の台本の文字がカタカナ表記だとしたら、子供たちは、「これ、英語?」と拍子抜けするでしょう。子供たち自身の耳で、「練習した発音をカタカナ、ひらがなでルビをふる」ことは文字に親しむ上で問題がありません。練習時間が5コマしかない中、あるクラスは、その台本を見ることなく、見事な発音とジェスチャーで演じてくれました。

 

■「音声と文字は表裏一体」と考える私は、「4技能」の「読み書き」も「コミュニケーションの素地」づくりに欠かせないと信じて、2年目の成果を楽しみにしています。